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 ローレット加工という言葉をご存知でしょうか? 円柱部分に凹凸を刻むことにより、操作する際に滑りにくくする目的で施される金属加工の一形態です。その語源はフランス語のrouletteで、回転する円盤に球を投げ入れて、落ちる番号を当てるカジノゲーム(ルーレット)と同根の言葉です。 ルーレット盤を回転させるごとく、距離環や絞り環となる円筒形の部材を回転させ、一本一本、溝を刻んでいきます。これは平目のローレットと呼ばれ、回転方向に対して滑りにくくする効用があり、見た目にも美しいものです。ただし、精密な切削技術がなければ溝の端に刃物の跡が残ってしまったり、最後の溝の間隔が不揃いになるなど、美観を損ねてしまうというリスクのある加工法でもあります。

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 カメラの交換レンズにローレット加工をするのが標準的だったのは1960年代までであり、それ以降は広く浅い溝をひとつ刻んで、その上に合成ゴムのリングを接着するという方法がポピュラーになります。現在では、多くの交換レンズの鏡筒部品はエンジニアリングプラスチック製となり、射出成形された外殻に樹脂製のリングが接着される、あるいは手がかりの溝までも一体成形にすることでハイサイクルの生産性が追求されています。 コシナがいまだにこだわりつづけるローレット加工は時代遅れの技術なのでしょうか? 私たちは、決してそうではないと信じています。

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 工程数も人手もかかり、工作に時間も必要なローレット加工を施された交換レンズには、そこに注がれた労力と情熱に見合った手応えと耐久性、そして美しさがあると私たちは考えています。いつまでも愛用していただけるハイエンドの交換レンズとして、人間の手で操作する道具としての気品を、ローレット加工が醸し出してくれるのです。

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