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 中野ファクトリーにおいて、圧倒的に女性職員の割合の多い場所、それが“色入れ”工程のブースです。ここの雰囲気は、勇ましく切削音を立てる工作機械や湯気を立てるメッキ槽の設置されたエリアとは大きく異なります。均質にやわらかな光が回るように照明設計され、清潔で整頓された作業台のうえで粛々と作業が進行していきます。
 このブースでは大型の工作機器はもちろんのこと、電動工具の類も一切使われません。職員各自がガラス製のシリンジを管理し、自分の道具として取り扱います。この中に充填した塗料を、彫刻された文字や記号の溝の中へと流し込むのです。

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 ZEISSの白。T*の朱色。溝の中に流し込まれた塗料は、乾燥によって少し痩せていきます。その分を勘案しながら、ほんの少し溝から溢れる程度の量で塗料を載せる。これは手先の器用さと経験がもたらす精密さが求められる作業です。心静かに集中し、シリンジの一振りで弧を描く。その軌跡が少しでもブレたら、溝の中に塗料の入らない部分が出てきます。とはいえ塗料を大盛りにするのも良くありません。溝の外周に塗料が残りすぎると拭き取りの際に溝の中の塗料まですくい取られてしまい、仕上がりが不均一になるからです。

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 彫刻された溝に流し込まれた塗料だけを残し、外周にはみ出した部分を拭き取る工程も、完全なる手作業です。繊細に、大胆に。迷いのない手先の動きによりブランドやレンズ名、シリアルナンバーが浮かび上がっていきます。どの角度から眺めても、しっかりと色が入っていること。ここで良品を生み出す原動力となっているのは美意識なのです。
 コシナは男女同権を基本理念とする企業ですが、やはりこの工程は女性的なセンスが活かされているように感じます。常日頃から美しく見せることを意識している彼女たちが一文字一文字に神経を集中することにより、ハイエンド交換レンズに記された文字や数字は末永くご愛用いただくに足る耐久性と美しさを身につけるのです。

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