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 熟練の手さばきで、ふたつの鏡筒部品を何度も回転させる。そして、納得のゆく感触になったら、洗浄して組み立ての工程へと送り出す。これはラッピング(Lapping)と呼ばれる部品同士の微妙な擦り合わせ作業です。ヘリコイドとは、鏡筒の螺旋溝の回転により前後方向にレンズを移動させる機構のこと。通常のネジとは異なりネジ山の断面は台形になっており、多条ネジと呼ばれる副列のネジを採用することで、少ない回転角度で大きな前後移動を可能にしています。ヘリコイドを製作するにはピッチを等分割した複数のネジを切る必要があり、一般的な単列のネジよりも更に厳密な工作精度が要求されます。

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 モーターで駆動するのであれば問題なく動作する精度であったとしても、人間の指先には微妙な感触として工作の粗雑さをキャッチする能力があるのです。ヘリコイドの噛み合わせ部分にごく僅かな寸法の差やバリの突出があれば、「何か引っかかる感じがする」「滑らかさが足りない」「ピントリングの重さが変わる」など、操作感覚にダイレクトに反映してしまいます。そして、ピントリングの操作フィーリングの善し悪しが撮影意欲に影響するがゆえに、私たちは人間の手でラッピング作業を行っているのです。

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 ヘリコイドの溝にラッピング材を塗布し、回転の感触を確かめながら何往復も動かすことで、溝の噛み合わせは非常に滑らかな状態になっていきます。とはいえ、これをやりすぎては噛み合わせのマージンが広がりすぎて逆にガタツキの原因となってしまいます。ヘリコイドの多条ネジにグリスが充填された状態をイメージしながら、最適の感触のところでラッピングを停止する。この『過ぎたるは猶(なお)及ばざるがごとし』という絶妙な判断により、近接から無限遠までスムーズで均一なフォーカシングの感触が実現するのです。
 私たちが製造するハイエンド交換レンズのすべては、こだわりのヘリコイド・ラッピング工程を経てから組み上げられ、皆様のお手元に届くのです。

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