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 上の写真は、中野ファクトリーのハイエンド交換レンズ製造現場で、パーツストッカーの中をのぞいてみた様子です。全長10数ミリの小さな部品。これは、直進キーと呼ばれるもので、レンズ鏡筒のヘリコイドを操作する際に、鏡筒の内筒部分を回転させずに直進運動をさせることを目的として用いられるパーツです。ヘリコイドの外筒に刻まれた凹形のガイドに沿って直進キーが移動することにより、レンズの前玉を回転させることなく繰り出したり戻したりすることが可能になります。現代的なレンズには、ヘリコイド部に直進キーが必ずと言って良いほど採用されています。

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 直進キーの凸部分は、凹形のガイドの幅より狭くなければ動きません。しかし、噛み合わせのマージンが大きすぎればガタツキの原因にもなりますし、ヘリコイドリングを手で操作する際の感触に大いに影響します。すなわち、モーター駆動を前提とする普及品の性能としては問題ないと判断される許容範囲の仕様であったとしても、人の手で操作するハイエンド光学製品としては品位に欠ける操作感になってしまう可能性があるのです。
 そこでコシナでは、直進キーをひとつひとつ、凹形のガイドとの相性を探りながら微調整しています。具体的には金属製の直進キーをバイスに挿んで圧力を加えることでキーの幅をごく僅かに広げ、凹形のガイドとの噛み合わせをベストの状態に調整するのです。

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 確実なピント操作を可能とするマニュアルフォーカスのレンズには、均一で適度なトルクをもつ滑らかな操作感が求められます。ひとつひとつ手作業で調整された直進キーはヘリコイドユニットに組み込まれ、スムーズな動きをするかどうか人間の指先の感覚で確認され、少しでも違和感があれば再度の調整が施されます。
 直進キーの微細な調整工程は自動化されていませんし、今後も自動化の予定はありません。この微妙な感覚を定量化するパラメーター設定やセンシングの技術を開拓することにも意義はあるかもしれませんが、人の手で操作するハイエンド光学製品の品格は、やはり人の手で審査するほうが賢明な選択であると私たちは考えているからです。

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