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 研削工程で規定の曲率に近づけられたレンズは、その後2段階の研磨を行うことで、設計上で要求されているレンズの形状と厳密に合致させていきます。研磨ではレンズと逆の曲面をもつ研磨皿が光学ガラスと擦り合わせられます。凸レンズは凹面の研磨皿で、凹レンズは凸面の研磨皿によって磨かれるのです。研磨皿の面形状がレンズに移し替えられるので、研磨皿には高い精度が求められます。スムージングと呼ばれる第1段階の研磨では、研磨皿に円形の小さなダイヤモンド砥石(ダイヤモンドペレット)を多数接着した工具を用います。上の写真は、研磨皿の上にダイヤモンドペレットを貼付けている様子です。

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 お椀状の研磨皿に接着されたダイヤモンドペレットの表面は、ひとつひとつ微妙に異なる曲率になっていて、研磨皿全体として見た場合のカーブが、目指すべき凹レンズもしくは凸レンズの形状に合致するように配置されています。研磨皿はレンズよりも大きな直径をもつことから、多数貼付けられたペレットのうち何割かがレンズと接触することになります。研磨皿の中でレンズはコマのように回転しながら動き回ることで効率よくレンズの研磨は進行していきますが、研磨皿のどの位置をレンズが通過していても、常に同じ個数のペレットと接触している必要があります。ダイヤモンドペレットの配置にムラがあれば、研磨されていくレンズの面精度に影響が出てしまうのです。

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 こうして曲率精度が高められ、厚さも2/100ミリ程度の公差まで追い込まれたレンズの表面は透明のテクスチャーを獲得します。中心から外周まで、歪みなく正しい曲率で磨くためには、ダイヤモンドペレットを正確に配置することが必須の条件です。この作業には、図面もガイドとなる治具も存在しません。研磨皿ごとに指定されたペレットの個数があるだけです。ではどうするのか? まず心を静めて中心に5つの布石を打つ。そこから放射状に等間隔を保ちながら布陣を決めたら、分割された5つの領域を一気呵成に埋め尽くす。この方法論は、ほんの一例に過ぎません。最適な配置メソッドは研磨皿のサイズや形状により異なります。すなわちレンズ研磨のプロフェッショナルは囲碁の達人のごとく、数多くの定石を心得ているのです。

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