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 上の写真は、レンズ原形をプレスする際に四角い光学ガラス切断品を電気炉の中で熱しながら移動させるのに使う加熱皿です。加工するレンズのサイズや曲率に応じて、さまざまな種類が用意されています。この加熱皿は、手にしてみると驚くほど軽い物質で作られているのが判ります。 珪藻土(けいそうど)あるいはダイアトマイトと呼ばれるこの素材は、藻類の一種である珪藻の殻が化石となったもので、主に白亜紀以降の地層から採取されます。コシナ小布施ファクトリーで使用している加熱皿は品質の高さで知られる石川県産。珪藻土は東日本大震災以降、木炭などのバイオマスを利用する移動できる調理用の炉として注目を集めた七輪(しちりん)の原材料としても古くから使われています。

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 珪藻土は軽いだけでなく熱の伝わりが低いことから、電気炉へ入れても熱の吸収が少ないので炉内の安定した温度管理を阻害しません。摂氏700度前後で熱せられた光学ガラス素材は電気炉の中で次第に軟らかくなり、加熱皿の窪みに沿って変形していきます。電気炉の出口で待ち構えているプレス金型のサイズよりも微妙に小さい丸い形になるよう、加熱皿は設計されているのです。このとき四角い光学ガラス切断品の四隅が加熱皿と擦れ合うので、繰り返しの使用によって加熱皿の窪みの形に不均一が生じてきます。そこで定期的に規定の曲率を保つよう修正しています。

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 規定の径と深さを保つべく用意された、窪みの種類に応じた修正治具の数々。これらはすべて小布施ファクトリー内で製作されたものです。また、加熱皿は珪藻土を焼成して形づくられたものですが、光学ガラス切断品のプレス工程に使用する前に充分なエイジングを施すことが定められています。ごく少量でも加熱皿に揮発性不純物が混在していると光学ガラス素材に悪影響を与えるので、摂氏600度から800度の高温で2週間かけて焼き、徹底的に安定化させるのです。珪藻が化石となるのに要した時間に比べれば短いですが、現代の工業化社会の基準に照らし合わせれば充分に長い時間をかけて焼いた加熱皿を使う。これも私たちコシナがハイエンド光学製品を作るにあたり実施しているこだわりのひとつです。

 

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