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 透明な光学ガラスで作られているのに、光にかざすと淡いグリーンやイエローなど、さまざまな色の表情を見せる不思議な物体。上の写真は、コシナ七瀬ファクトリーで製作された特別な用途に使われるプリズムを手にしている様子です。立方体に近い形で、ひとかたまりのガラスブロックに見えますが、実は4つの直角プリズムを精密に張り合わせて作られています。そしてプリズムが接触している張り合わせの面には、特殊なコーティングが施されているのです。この光学デバイスの目的とは、ある波長域の光だけを反射させ、それ以外の領域の光を透過させてしまうこと。白く見える光源を色に分け、それをふたたび混ぜ合わせることから“分離合成光学系”と呼ばれるジャンルに多く応用されています。

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 一般的に写真撮影用のレンズでは、複数枚で構成されるレンズそれぞれの面で不要な反射をどれだけ防ぎ、入ってきたままの光を透過させるかに注力するものですが、分離合成光学系では、特定の波長域の光だけを反射させることができるかが重要になります。これらの特性を持つ光学デバイスには、ダイクロイックミラーやダイクロイックプリズムなどがあります。反射を防ぎ均質に光を透過させるためのコーティングを達成するには多くの困難を克服する必要がありますが、それ以上に複雑なプロセスとシビアなコントロールを経て、ダイクロイック光学デバイスは製造されています。用途によりますが、コーティング膜層は、反射防止マルチコーティングよりも多く、時には50層ものコーティングが施されているのです。

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 これらの分離合成光学系を応用した製品の代表が、プロジェクターです。光をRGBの3色に分解し、ふたたび合成して大画面へと投射する装置の心臓部に、特殊なコーティングによって製作されたプリズムやミラーが用いられています。特に大型のシネマコンプレックスに納入されるプロジェクターでは、上映するコンテンツの品質に直接関わるので僅かな色ズレも許されません。蒸着物質の選定と、多層コーティングの膜厚と重ね方の設計をし、ナノオーダーで膜厚を制御する技術とノウハウの蓄積がなければ、この繊細で複雑な光学デバイスを作り上げることは不可能です。そして、そこで培われたものづくりの技術姿勢は、写真撮影用の高品位な反射防止コーティングにフィードバックされているのです。

 

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