k-01
history-1






 


マーケティング担当は営業活動を通じ、ユーザーが真に求めている製品の情報を販売の前線から得て、それを商品企画にフィードバックする役割も果たす。戸谷さんは機構設計を担当していた経歴があり、その知識と経験を生かした活動を展開。森さんは2016年入社で大学時代は写真部の部長を務め、フィルムカメラで作品を制作。愛機はカメラ好きの父親から手渡されたニコンFAとのこと。

アポランター50mm F2は、コシナ創業60周年・フォクトレンダー復活20周年を記念するモデルとして開発されました。商品企画の段階で『こんな商品が欲しい』という意見を社員に加えOBの方々などからも集められたそうですが、お二人はどんなアイデアを出されましたか?

戸谷「徹底的にボケにこだわったレンズが欲しいと提案した記憶があります。ボケの好みは人それぞれ違いますので、様々なボケを楽しめるボケの種類が異なるレンズをラインナップとして出したいという思いがありました。もちろん明るいレンズですね」

森「私はF0.95の交換レンズをEマウントかVMでと書きました。フォクトレンダーのF0.95という明るいレンズは現在マイクロフォーサーズ用しかなく、フルサイズのF0.95が出せれば高い技術力のアピールになると思ったからです。絞り開放からしっかりした画質の“使えるドリームレンズ”です」


どちらのアイデアも魅力的ですね。数多くの意見を集約して、こんなコンセプトのレンズを作ろう。と決めていくのは大変だったのでは?

森「中古市場で人気のあるヘリアーのF3.5など、過去のリバイバルという案もありました。皆さんの意見を聞いて話している中で、全体のムードとして高性能路線という方向に意識が向いていきました。世界初のようなスペックも決して悪くはありませんが、極端な新奇性に振ってしまうとユーザーさんに本当に使ってもらえるのかという課題が残ります」

戸谷「高性能かつ大口径であればレンズの大きさや枚数は増えてしまい、サイズは大きくなるし価格も高くなります。そこで狙いが絞られたのは皆さんに使っていただけるようなバランスも含めて高性能を徹底的に目指したレンズですね」

メーカーが発するメッセージとして捉えると、50mmF2のレンズというのは地味なスペックにも感じます。あえてこの渋い選択をされたのは、ユーザーからの声の蓄積という要素もあったのでしょうか?


森「フォクトレンダーの交換レンズにはパッケージに入っているハガキがあり、ユーザーの方々からのご意見や応援のメッセージ、こんなレンズがあったらという希望が寄せられています。そこに『大きいレンズは使いにくいよ』というご意見が見受けられ、それを考えた時、適度に小型で取り回しのしやすいレンズを求められていると感じていました」

戸谷「私たちは未だにwebではなくアンケートハガキに記入していただいています。手書きしてもらうと、どんなレンズを心底欲していて、それを伝えたいという熱意が文章や筆跡から伝わってくるんです。そこから抽出されたユーザーさんの実感としては、ミラーレスのカメラで使うサイズ感としては大きすぎるレンズが結構多い。レンズの性能が高いとピントの深度も狭まって感じられますので、その点も含めて適切な開放絞り値はF2が適切だと判断しました。」

今回の新製品を持って販売店などを回られたと思うのですが、このレンズに対してどのようなリアクションが戻ってきましたか?



戸谷「いつもは『ここをこうして欲しい』『もうちょっとここを』という言い方をされるのですが、この製品に関しては大絶賛でした。これまでアポランターシリーズは65mmや110mmが出ていたので、今回のアポランターという銘柄だけで高性能であることは疑う余地がないとご理解いただけています。一番褒めていただいたのはサイズ感ですね。『こういうのを求めていた!』と、こんなに褒めてもらえるのかと思うくらいでした(笑)。今後の製品に対しても、このサイズを基本にして製品の企画をして欲しいという勢いでリクエストを頂戴しました」


森「皆さんいい反応を示してくださって、やっぱりこのサイズ感ですよね。大きくならずにここまでの高性能を出すことができたことが好評です。カメラ店の女性で、マニュアルフォーカスを普段使われないような方にも触ってもらいました。実際にファインダーをのぞいてピント合わせもしていただきましたが『マニュアルだけど全然難しいこともなく合わせやすい』とのことでした。このレンズはカメラのエキスパートの方はもちろん、ビギナーの方にもあつかいやすいので是非使っていただきたいと思いました」

戸谷「ファインダーを見た瞬間から性能がいいのがすぐに分かった。ピントを操作するときに画像が現れてくる時の立体感が心地よいので、フォーカスリングをゆっくり回して楽しみたい。とのコメントも頂戴しました。どのように撮れるか、パソコンの中にデータを持ち歩いてお見せしています。部分的な拡大の作例には『こんなに写るの!?』と驚かれていましたね。


森「特にEマウントユーザーは、とにかくよく写るレンズを期待されている傾向が伺えます。そのユーザーさんには、この性能が一番響くのかなと。アポランターという銘柄だけでは若い人には性能が伝わりづらい部分もあったりするのですが、実際に撮られた写真を見て、ネット上のレビューでじわじわ人気が広がっているようです」

戸谷「Eマウントのマクロアポランター65mmは人気の製品で、各種マウントのラインナップの中で国内では一番売れているレンズです。今回のアポランター50mmF2はフォクトレンダーのレンズとしては初めてMTFを公開しているので、それを見ながら他ブランドの超高性能で知られる標準レンズと比べてもすごいのではないかという噂がツイッターに上がっているのを目にしました」


フォクトレンダー史上最高性能の標準レンズとカタログにも記されています。ここまでの性能なら、20万円以上でもおかしくないと思うのですが価格はすんなり決まったのでしょうか?

戸谷「社内外の声として最近の高性能なレンズは価格設定が高めで、皆さんが手軽に使えるような価格帯に抑えるべきという考えからこのような価格設定となりました。もちろん、もっと価格を上げてもいいという意見も一部でありましたが、F値も適切なところでサイズ感も使いやすいのに、値段だけ跳ね上がって簡単に買えない状況はおかしいという声が勝った結果です」

森「最高性能を謳いながら、この値段を聞いた時は安いなと思いました。性能に準じた高価な価格設定という考え方もありますが、やはり幅広い方々に使っていただきたいという思いがあって、価格を抑える工夫をして、フォクトレンダー史上最高性能の標準レンズの定価は12万円になりました。おかげさまで受注も好調で、ここ最近ではダントツです」

コンパクトで超高性能、値段にも無理がない。このアポランター50mmF2を今後プライベートで使う予定はありますか?


森「フィルムはニコンで撮っていて、デジタルは富士フイルムのX-Pro2にフジノン14mmF2.8と、フォクトレンダーのヴィンテージライン35mmF1.7がメインの機材なんです。 だからX-Proユーザーとしては寂しいです」

戸谷「僕は、Eマウントユーザーで本当に良かったと思っています(笑)」

 


 


    NEXT

Vol.4 製造担当者